転職やSEについて深く考えてみるシリーズ第三弾です。
「地理的アービトラージ」という言葉をご存知でしょうか。金融用語で「価格差を利用して利益を得る」ことをアービトラージと呼びますが、これをキャリアに応用する考え方が、リモートワーク時代のエンジニアの間で広まっています。
為替FXみたいなもんですかね。知らんけどw
簡単に言えば、「生活コストが低い場所に住みながら、給与水準が高い国の仕事をする」という戦略です。世界のSE年収データを見ると、この戦略がいかに合理的かが浮かび上がってきます。
同じスキルなのに「住む場所」で年収が3倍違う現実
Arc.devが45万人以上のリモートエンジニアから集めた自己申告データによると、リモートSEの平均年収は地域によって大きく異なります。
北米が約82,757ドル(約1,240万円)、西ヨーロッパが約69,720ドル(約1,050万円)、アジアが約56,483ドル(約850万円)、アフリカが約53,333ドル(約800万円)。グローバル平均は70,877ドル(約1,060万円)です。
しかし、これはあくまで「その地域で雇用されているリモートエンジニア」の平均です。注目すべきは、同じリモート職でも米国企業に雇われたエンジニアと、ローカル企業に雇われたエンジニアでは、同じ国に住んでいても年収が2〜3倍違うことがあるという事実です。
「住む国」と「働く国」を分離する時代
従来の転職では「年収を上げたければ東京に出る」「外資に転職する」が定石でした。しかしリモートワークの浸透により、第三の選択肢が生まれています。
たとえばポルトガルは、スタートアップエコシステムの成長とともに、リモートワーカーに優しい税制やビザ制度を整備し、世界中のエンジニアを誘致しています。生活コストはサンフランシスコの3分の1以下でありながら、米国企業のリモート案件を受ければ先進国並みの収入を得ることが可能です。
UAEのドバイも同様の戦略をとっており、ソフトウェアエンジニアの年収は5万〜9万ドルですが、所得税がゼロのため手取りが大幅に増えます。シニアエンジニアやAI関連のポジションでは10万ドルを超えることもあり、税引き後の実質収入は西ヨーロッパの同水準のポジションを上回るケースも少なくありません。
日本のSEがこの戦略を使うための現実的なステップ
「海外企業でリモートワーク」と聞くとハードルが高く感じるかもしれませんが、段階的に取り組むことは十分可能です。
ステップ1:国内の外資系企業リモート案件から始める
日本に法人を持つ外資系IT企業(AWS、Google、Microsoft、Datadog、GitLabなど)は、日本在住のリモートポジションを設けていることがあります。ここで「英語でのリモートワーク」の経験を積むのが最も低リスクな第一歩です。
ステップ2:海外プラットフォームでフリーランス案件を受ける
Toptal、Turing、Arc.devなどのプラットフォームでは、技術テストに合格すれば海外企業の案件にリモートで参画できます。最初は副業レベルから試すのがおすすめです。日本にいながらドル建てで報酬を受け取れるため、為替のメリットも享受できます。
ステップ3:デジタルノマドビザの活用を検討する
ポルトガル、スペイン、マレーシア、タイ、ドバイなど、デジタルノマド向けの長期滞在ビザを発行する国が増えています。日本の税務上の取り扱いは複雑なため専門家への相談が必要ですが、生活コストを大幅に下げながら収入を維持する選択肢として知っておく価値はあります。
年収以上に重要な「購買力平価」という視点
海外のエンジニアコミュニティでよく議論されるのが「名目年収」と「実質的な生活の質」の違いです。
たとえばサンフランシスコのエンジニアが年収20万ドル(約3,000万円)を稼いでいても、家賃だけで月40〜50万円、税率も高く、実際の生活の余裕はそこまで大きくないというのは有名な話です。一方、東欧のポーランドやルーマニアで年収7〜8万ドルを稼ぐエンジニアは、購買力ベースではサンフランシスコの同僚と遜色ない生活ができると言われています。
日本のSEにとっても、「額面年収を追いかける」のではなく「手取りの購買力を最大化する」という発想が重要です。地方在住でフルリモート案件を受ける、生活コストの低い国に一時的に移住するなど、「年収は変えずに可処分所得を増やす」戦略は、今後ますます現実的になっていくでしょう。
日本のSEは「安すぎる」のか?
グローバルな視点で見ると、日本のSEの報酬は決して低くはありませんが、スキルに対して適正かというと疑問が残ります。スイスのSEの平均年収は13万5,000ドル以上、アメリカは12万6,000ドル。日本はアジア圏ではシンガポール(約71,000ドル)に次ぐ水準の約68,000ドルとされています。
しかし、日本のSEの技術力は世界的にも高く評価されているにもかかわらず、SIerの多重下請け構造や年功序列の報酬体系が、適正な対価を受け取ることを妨げている側面があります。(根回しコネ文化ですからね特にJTC・・・
転職を考える際に「いくら欲しいか」だけでなく「自分のスキルは世界市場でいくらの価値があるか」を把握しておくことは、交渉力を高めるうえで非常に重要です。上記のようなグローバル報酬データを参照し、自分の市場価値を客観的に知ることが、転職活動の質を根本的に変えてくれます。
「場所の制約」を外すだけで選択肢は10倍に広がる
かつてSEの転職といえば「同じ都市の別の会社に移る」ことがほとんどでした。しかしリモートワークの浸透とグローバル採用の拡大により、選択肢は文字通り世界規模に広がっています。
もちろん、英語力やタイムゾーンの問題、契約形態の違いなどクリアすべき課題はあります。しかし、「場所」という制約を一つ外すだけで、年収・働き方・生活の質すべてにおいて、これまでとは次元の違う選択肢が手に入ります。
まずは今の自分のスキルセットが世界市場でどう評価されるのかを調べることから始めてみてください。見える景色が一変するはずです。
英語力もスキルも自信がないという方は、まず転職エージェントに相談してみるといいかもしれません。色々な転職の方針や日本での戦略を教えてくれますよ。





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